超音波洗浄効果について-no2

 

写真1 超音波洗浄

■ はじめに
超音波洗浄は、様々な業界の対象に対して利用されている。その中で、影響の大きさに比べ研究が少ない事項が、対象物に伝搬する超音波の状態に関する測定・解析である。これまでの15年間、対象物に伝搬する超音波の状態について検討し、「超音波洗浄効果の主要因は、音響流である」と言われていることについて、これまでに無い新しい対象物の評価システムを開発し、超音波洗浄の改善コンサルティングで、納得できる多数の実績を積み重ねて来た。
現在、この超音波システムを使用して、超音波洗浄に関する、対象物の事前評価、洗浄装置の事前検討、・・・対応が可能になった。
その結果、目的とする超音波洗浄効果に対して適正な制御が可能な、超音波洗浄システムの開発コンサルティング対応を実現した。

■1)何が問題か?
現在、超音波は幅広く利用されているが、多数の問題がある。
最大の問題は、適切な測定機器・方法がないために
超音波利用時の状態が明確になっていないことである。

偶然(対象物、冶具、環境、気候の変化 等)に左右されているのが実状である。
この問題を、
機械設計・装置開発の経験に基づいた「超音波の測定技術」と
制御システム開発の経験を利用した「統計数理による解析技術」を組み合わせることで解決し、対象に伝搬する超音波の状態が明確になった。

■2)どのようにして解決するのか?
新しい超音波システム技術
2-1)オシロスコープ・・の測定機器に接続した、圧電素子に流れる微弱な
電流による音圧変化を利用することで、対象物の表面により発生する
固有の振動現象を、測定解析評価する技術

<超音波伝搬状態の測定>
圧電素子とデジタルオシロスコープを使用して
統計処理(多変量自己回帰モデル解析)により
超音波振動の伝搬状態を測定・解析・評価する。


写真2 対象物表面の超音波振動を測定している様子

超音波の伝搬特性
1)振動モードの検出(自己相関の変化)
2)非線形現象の検出(バイスペクトルの変化)
3)応答特性の検出(インパルス応答の解析)
4)相互作用の検出(パワー寄与率の解析)

注:「R」フリーな統計処理言語かつ環境
autcor:自己相関の解析関数
bispec:バイスペクトルの解析関数
mulmar:インパルス応答の解析関数
mulnos:パワー寄与率の解析関数

図1 測定データに基づいた超音波伝搬状態の解析結果
(注:解析結果には、対象物の製造工程に関する影響が含まれています)

2-2)超音波専用プローブの開発・製造技術
圧電素子に関して、均一で安定したバラツキの小さい状態を実現するた
めのエージング処理技術
圧電素子の表面状態を調整する技術(伝搬特性の調整技術)
超音波プローブの製造・検査技術
上記に基づいて、利用目的に合わせた超音波プローブを製造する

写真3 超音波プローブの製造技術

写真4 ポリイミドフィルムに鉄めっきを行った部材の超音波伝搬特性テスト

以上の技術を基礎として、超音波伝搬状態の測定・解析・評価を実現させる
■3)どうして新しい超音波システムなのか?

<<超音波の音圧データ解析・評価>>

1)時系列データに関して、
多変量自己回帰モデルによるフィードバック解析により
測定データの統計的な性質(超音波の安定性・変化)について解析評価します

2)超音波発振による、発振部が発振による影響を
インパルス応答特性・自己相関の解析により
対象物の表面状態・・に関して
超音波振動現象の応答特性として解析評価します

3)発振と対象物(洗浄物、洗浄液、水槽・・)の相互作用を
パワー寄与率の解析により評価します

4)超音波の利用(洗浄・加工・攪拌・・)に関して
超音波効果の主要因である対象物(表面弾性波の伝搬)
あるいは対象液に伝搬する超音波の
非線形(バイスペクトル解析結果)現象により
超音波のダイナミック特性を解析評価します

この解析方法は、複雑な超音波振動のダイナミック特性を
時系列データの解析手法により、超音波の測定データに適応させる
これまでの経験と実績に基づいて実現しています。

注:解析には下記ツールを利用します
注:OML(Open Market License)
注:TIMSAC(TIMe Series Analysis and Control program)
注:「R」フリーな統計処理言語かつ環境超音波の音圧データ解析

上記により、検出・解決が難しい超音波伝搬状態の最適化問題を解決する

図2 超音波洗浄機の音圧データ・解析結果

■4)<具体例>

図3 洗浄液と対象物の超音波伝搬状態(相互作用の解析)

超音波の出力、液循環状態、揺動操作、・・・各種条件について最適化する
最適化により、音圧測定に基づいた、治工具・・の工夫により改善を進める


写真5 超音波洗浄機の音圧データ管理


図4 超音波洗浄機の管理(超音波のダイナミック制御:音圧測定解析)

図5 対象物の超音波伝搬特性に基づいた最適化技術

写真6 超音波洗浄効果に関する、洗浄物・汚れの分類

図6 超音波洗浄機の水中伝搬モデル

以上の各種技術により、目的に対する適正な超音波利用が可能になる

■ 超音波プローブ:概略仕様
測定範囲 0.01Hz~200MHz
発振範囲 0.5kHz~25MHz
伝搬範囲 1kHz~900MHz以上(音圧データの解析確認)
材質 ステンレス、LCP樹脂、シリコン、テフロン、ガラス・・・
測定・発振機器 例 オシロスコープ、ファンクションジェネレータ・・・

■ まとめ
AI技術の進化は、新しい応用や組み合わせの可能性を大きく広げている
しかし、進化に逆行するような根本的な学問(数学や哲学)に戻って検討する重要性が、今後ますます超音波という技術を飛躍させると感じる
超音波の可能性を考え、暗黙知による超音波技術への取り組みにより、新たな利用を検討していきたいと考えている

【本件に関するお問合せ先】
超音波システム研究所
メールアドレス  info@ultrasonic-labo.com

超音波(キャビテーション・音響流)の分類
http://ultrasonic-labo.com/?p=17231超音波システム(音圧測定解析、発振制御)の利用技術
http://ultrasonic-labo.com/?p=16477超音波洗浄について
http://ultrasonic-labo.com/?p=15233超音波技術(コンサルティング対応)
http://ultrasonic-labo.com/?p=1401超音波発振システム(20MHz)の製造販売
http://ultrasonic-labo.com/?p=1648

超音波洗浄セミナーテキストの公開
http://ultrasonic-labo.com/?p=12973

キャビテーションと音響流の制御技術
http://ultrasonic-labo.com/?p=2947

超音波の音圧測定解析システム「超音波テスターNA」
http://ultrasonic-labo.com/?p=16120

新しい超音波発振制御プローブの製造方法
http://ultrasonic-labo.com/?p=1184

水槽と超音波と液循環に関する最適化・評価技術
http://ultrasonic-labo.com/?p=7277

超音波とファインバブル(マイクロバブル)による洗浄技術
http://ultrasonic-labo.com/?p=18101

ポリイミドフィルムに鉄めっきを行った部材を利用した超音波プローブ
http://ultrasonic-labo.com/?p=13404

シャノンのジャグリング定理を応用した「メガヘルツの超音波制御」方法
http://ultrasonic-labo.com/?p=1996

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